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平成27年1月1日より相続税や所得税が増税になったことも影響し「(自称)プライベートバンカー」や「(自称)ファイナンシャルプランナー」などを名乗る者から、資産オーナーの元に「うまそうな節税話」が持ち込まれる機会がますます増加しています。特に海外の不動産や金融商品等を活用したものが一段と目立つようになってきました。しかしながら、海外には日本には存在しないような組織形態や金融商品等も多く存在し、税務上の取り扱いが明確でないケースが多々あるというのが実態です。税理士資格も有さないこれらの「(自称)プライベートバンカー」達の「絶対節税になりますよ!」というような自信満々のセールストークを信じて実行した結果、税務調査で大きなトラブルになるケースが続出しています。

今、大きな問題となっている「海外不動産投資」を活用した「節税対策」について紹介していきましょう。まず日本に居住する(高額所得者と思われる)個人が、アメリカ合衆国の「LPS(リミテッド・パートナー・シップ)」という組織体に出資します。この「LPS」は出資してもらったお金で不動産を購入し、第三者に賃貸して賃料収入を得ます。航空機リースや太陽光発電などと同様の原理ですが、投資した直後の事業年度で多額の減価償却費を計上できることから、この「LPS」の投資直後の決算は通常は赤字になります。

「(自称)プライベートバンカー」達のセールストークによると、この「LPS」の赤字は、そのまま出資した個人の赤字とみなされるから、他の所得と相殺する(損益通算する)ことができるということのようでした。仮に個人に給与所得が1億円あったとして、このLPSの投資初年度の赤字が6,000万円だったとすれば、差し引き4,000万円にだけ所得税を払えば良いから大幅に節税になるというような理屈です。しかし国税当局がこの損益通算を認めなかったため、大きな問題となったのです。損益通算が認められないとされた根拠は、この「LPS」という組織体そのものです。「LPS」はアメリカ合衆国には存在するものの、日本には存在しない組織形態です。この「LPS」が、日本で言うところの「任意組合」等にあたる、つまり単なる「個人の集合体」のようなものということであれば、確かに「LPS」の赤字は投資家である個人の不動産所得のマイナスとみなされ、他の所得との損益通算が可能になります。これに対して日本で言うところの「法人」つまり「会社」にあたるということであれば「LPS」の赤字は会社の赤字ということになりますから、損益通算はできません。このように「LPS」が、日本で言うところの「任意組合」等なのか「法人」なのかで、税務上の取り扱いが全く異なるため、大きな問題になりました。

この「LPS」を用いた「節税対策」は「(自称)プライベートバンカー」達によって全国的に提案されていたため、複数の税務訴訟が発生してしまいました。その結果、驚くことに裁判所毎にバラバラの判決が出たのです。結果的に最高裁で「法人」とする判決が出たため、今後はこの判例を前提に統一されていくと見られています。つまり実行した資産オーナーから見ると、節税ならないどころか、裁判で無駄なエネルギーを費やした上、多額の弁護士費用や加算税などのペナルティまでかかったということになりました。ここからわかることは「LPS」は日本の法律に定めがないため、裁判所や専門家ですら判断に迷ってしまうようなものだったということです。つまり税務上の取り扱いが最初から極めて曖昧なものだったにもかかわらず、「(自称)プライベートバンカー」達は、税理士資格も無いのに自信満々に「絶対節税になりますよ!」というような無責任なセールスをしていたということです。資産オーナーに税務リスクを問われると「ウチの顧問である国際税務に強い税理士が大丈夫だと言っている」、「○○さん(大変著名な資産オーナー)のところでもやったが、税務調査では全く問題にならなかった」など、真偽の確認が困難なセールストークが用いられることも多々あるようです。

欧米諸国等を中心に存在する本物の「プライベートバンカー」や「ファイナンシャルプランナー」とは極めて信用度の高い超一流の職業ですから、間違ってもこのような無責任なことはしないはずです。そういう意味では、本物の「プライベートバンカー」や「ファイナンシャルプランナー」にとっては、こういった人達の存在は迷惑千万といったところかもしれません。

結局のところ、誰の話を信じたとしても、結果責任は資産オーナーのところにふりかかることになります。「うまそうな節税話」が持ち込まれた場合、自分にだけ特別の美味しい情報が手に入ったと思って舞い上がるのではなく、少し冷静になって税理士資格を持っている専門家に必ず相談するようにしましょう。

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