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賃借用建物と借入金を請求人が相続

今月は平成27年1月6日の裁決事例を紹介していきます。

被相続人(審査請求人(以下「請求人」)の父)は、相続開始前に同族会社A社が所有する賃貸用建物を約3億7,000万円で取得する一方で、その売買代金は全額A社からの借入金(金利2%、返済期日20年後)としました。被相続人が死去したため、請求人はこの賃貸用建物を財産評価基本通達93により約1億2,000万円と評価する一方で、借入金約3億7,000万円を債務控除し、相続税額をゼロとする申告書を提出しました。

行為計算否認規定を適用

これに対して原処分庁は本件一連の行為を容認した場合には、請求人の相続税の負担を不当に減少させる結果になるなどとして、相続税法64条1項(同族会社等の行為または計算の否認等)を適用し、この賃貸用建物と借入金をないものとして相続税の課税価格を再計算し更正処分を行いました。これに対し請求人は、借入をして不動産を取得するという取引は一般的に行われているものであり、本件一連の行為によって相続税の負担が不当に減少したものではないと主張しました。

国税不服審判所は①賃貸用建物の敷地に借地権が設定されている一方で権利金の授受がないこと、②売買代金額の算定にあたり賃貸用建物に付されている根抵当権の存在が考慮されていないこと、③弁済期が20年後である借入金に関し担保提供がないこと、④相続開始日の2か月後にA社が賃貸用建物を請求人から買い戻していることなどから、本件一連の行為の目的は相続税の負担を減少させることにあったと指摘し、原処分庁の主張を全面的に認める裁決を下しました。

経済合理性のない売買契約

同族関係者間で建物所有者と土地所有者が別々になる時には「相当の地代方式」や「無償返還届出書方式」、「使用貸借契約」などによることがほとんどで、権利金の授受をするケースは非常に少ないというのが実態です。また会社が金融機関から借入をする際に経営者個人が連帯保証人になったり、その個人所有の不動産に根抵当権を設定することも幅広く行われています。本件について特に不自然・不合理と考えられるのは「売買代金を全額借入としていること」と「相続開始日の2か月後にA社が買い戻していること」の2点でしょう。

不動産の購入に際して、フルローンかつ20年後に一括で返済するという条件で、金融機関から無担保の借入をすることは日本ではまず不可能です。加えて相続直後にA社による買い戻しが行われているということは、一連の書類を形式的に整えることで、相続発生日の前後だけ登記簿上の名義を被相続人に書き換えていただけと理解するのが最も合理的と考えられます。

富裕層の「租税回避行為=行き過ぎた節税策」に対する税務調査については、国税当局はプロジェクトチームを作って極めて積極的に取り組んでいます。良かれと思ってやった相続税対策が「相続税の負担を不当に減少させる結果」となっていないか、十分な検討が必要です。

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