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今回のKPCレポートは、名古屋地裁における平成28年2月26日の判例を紹介していきます。

1 信託銀行から紹介されてきた税理士法人

原告は平成19年12月12日に死去した被相続人の養子でした。被相続人は遺言執行者を信託銀行と定めた公正証書遺言を作成していたため、同銀行が遺言執行者としての業務を行いました。信託銀行は被告である税理士法人を原告に紹介し、原告は被告に対して相続税の申告納税手続を委託しました。原告が納付すべき相続税額は4億5141万1800円であり、原告は相続税延納申請を行い、平成21年までに数回に分けて全額を納税しました。

 

2 物納について説明がなかった

相続税法41条は、納税義務者が納付すべき相続税額を延納によっても金銭納付を困難とすべき事由がある場合においては、税務署長が、納税義務者の申請により、納付を困難とする金額として政令で定める金額を限度として物納の許可をすることができると定めています。税理士法人は金銭納付をするものと考えて、物納について説明をしませんでした。結果として原告は物納ができないと誤信したまま、物納対象となり得た株式を相続開始時の価額よりも低額で売却しました。

 

3 税理士の説明義務

判例では「被告は、原告との間で締結した準委任契約上の善管注意義務を負い、委任者の説明内容や関係法令、制度を適切に確認、調査の上、委任者において適正な納税を行い、かつ、最も利益となるように申告手続及び納付手続を行うべき注意義務、そのための助言指 導義務を負っていると解すべきである」とされ、申告期限前に「財産目録の調製が完了して、遺言執行者において遺言の執行段階に入っており、相続税の概算が算出されたのであるから、申告手続について委託を受けた税理士には、納税の方法について委任者に確認し、必要な助言指導を行う義務が発生しているというべき」であるとし、税理士法人が「納税方法について何ら確認せず、物納についての検討を行わなかったことは、上記注意義務に違反するものと言わざるを得ない」として、これによって生じた損害については税理士法人が賠償義務を負うべきであるとしました。

 

4 幅広くとらえられる税理士の責任

最近の裁判では税理士の責任が幅広くとらえられる傾向にあります。税理士自身も申告前にセカンドオピニオンをとるなどの対策が必要になっていると言えるでしょう。

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