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東京国税局の内部研修である「資産税審理研修」の資料を入手したため、平成29年9月のKPCレポートは、この内容を紹介していきます。

1 総則6項適用の考え方

研修資料においては「これまで評基通6の適用の有無が争点となった裁判例では『この通達の定めによって評価することが著しく不適当』であるか否かの判断は、財産評価基本通達に定める評価方法によらないことが正当と認められる『特別の事情』の有無による旨示されている」とした上で「この『特別の事情』の有無の判断に当たっては、次の《参考》に掲げる点などに着目しつつ、様々な事実関係を総合考慮することに留意する」とあります。

その上で《裁判例》として、いずれも国税側が勝訴している「大阪高裁平成17年5月31日」と「東京地裁平成17年11月30日」の2つの判例を取り上げています。前者はいわゆる「取引相場のない株式の評価」についてのもの、後者はいわゆる「広大地」に関するものです。

 

2 《参考》に記載された4つのポイント

さらに最後に《参考》として、総則6項適用に当たっての具体的な4つの留意点が示されています。

①評基通に定められた評価方法を形式的に適用することの合理性が欠如していること

②評基通に定められた評価方法のほかに、他の合理的な評価方法が存在すること

③評基通に定められた評価方法による評価額と他の合理的な評価方法による評価額との間に著しい乖離が存在すること

④上記③の著しい乖離が生じたことにつき納税者側の行為が介在していること

東京国税局が資産税審理研修でこのような内容を取り上げているということは、今後、いわゆる「タワーマンション節税」や「株特外し」等の「行き過ぎた相続税の節税策」についての税務調査を強化させる方針であると考えられます。特に「④上記③の著しい乖離が生じたことにつき納税者側の行為が介在していること」とあるのは大きなポイントで「納税者の租税回避意思の有無」が大きな判断基準となるものと考えられます。

「総則6項」の適用のポイントは高度に実務的です。判断に迷った場合は、独立な立場にある専門家に必ず意見を求めるようにしましょう。

※「資産税審理研修」資料そのものを閲覧したい方は、個別にお問い合わせください。