LINEで送る
LinkedIn にシェア
Pocket

今回のKPCレポートは、平成29年1月23日の国税不服審判所の裁決事例を紹介していきます。以前のKPCレポートで取り上げた、『日本滞在日数が年の半数を下回っても「居住者」と認定』で紹介した裁決事例と内容が酷似していることにも注目です。

1 所得税法上の「居住者」の定義

所得税法2条において「居住者」とは「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人」と定義されています。また所得税基本通達2-1に「住所」とは「各人の生活の本拠」をいい「生活の本拠」であるかどうかは「客観的事実によって判定」するとあります。

2 インドネシアに年間250日以上滞在

請求人は一年のうちインドネシアに250日以上滞在していましたが、課税庁は請求人が所得税法上の「(日本の)居住者」に当たるとして平成25年の所得税等の更正処分などを行いました。請求人は自身はインドネシアを生活の本拠としていることから「(日本の)居住者」に当たらないとして、処分の取消しを求めました。

3 一年の半分以上もインドネシアにいるのに「(日本の)居住者」

請求人は平成25年において日本に102日、インドネシアに259日、このほか他国に4日滞在していました。しかし、審判所は「住所とは生活の本拠、全生活の中心を指し、その判定に当たっては客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かで決すべき」と指摘しました。

その上で、請求人について

  • 「インドネシアに滞在するために取得していたビザはいわゆるリタイアメントビザであったこと」
  • 「収入の大半を日本の証券会社とインターネットを利用した有価証券で得ていたこと」
  • 「日本に居宅を有していたこと」
  • 「生計を一にする妻が日本から出国していなかったこと」
  • 「インドネシアでの所在地が長期滞在型ホテルの一室であったこと」
  • 「国外資産をほとんど有していなかったこと」
  • 「肩書住所地を住所として国民健康保険に加入し、25年分の所得税等の申告書でも自己の住所を同所としていたこと」

以上を総合的に考察すれば、客観的に生活の本拠たる実体を有していたのは日本国内であると認定し、原処分は適法であると判断しました。

4 税務当局は海外に関連する富裕層に注目

税務当局は「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換」の開始など、海外に関連する富裕層の税務調査をますます厳しくしています。疑問点があったら、早めに専門家に確認して、大きなトラブルに巻き込まれないように注意しましょう。