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今回のKPCレポートは、近年、大きな問題となりつつあるマンション販売業者の消費税の問題を取り上げていきます。
なお、本レポートは公認会計士や税理士のようなプロの方を対象としたものではありません。消費税法の難解な専門用語を用いると理解が極めて困難になることから、表現の曖昧さによる誤解を恐れずに、あえて平易な表現のみを用いている点をご了承ください。

1 消費税は「納付」と「還付」の差額を納めるイメージ

まず中古マンションを買ってきて、自身のマージンを上乗せして転売するというビジネスをしているマンション販売業者を考えてみましょう。転売した時には買主から建物部分の譲渡対価の8%相当の消費税額もあわせて受け取ることとなります。しかし買主から受け取った消費税は一種の預り金のようなものですから、申告期限が来ればそっくりそのまま消費税として納付するイメージになります。一方でこのマンション販売業者は買った時に、売主に売買価額に加えて建物部分の譲渡対価の8%相当の消費税額をあわせて払っているでしょう。そうすると、今度は逆に一種の預け金のようなものになりますから、申告期限が来ると還付が受けられるということになります。実務上は納付と還付の差額を納めるというようなイメージになっています。

2 「納付」がない場合は「還付」もしない

しかし実際には転売目的の中古マンションを売主から買ってきた時に、既に賃借人が部屋に住んでいるケースも珍しくはないのではないでしょうか。そうすると転売までのタイムラグの間に、この賃借人からの家賃収入が入ってくることになります。ところが住宅の家賃収入には消費税がかかりませんから、マンション販売業者は家賃については消費税を預かることもなく、納付することもありません。実は消費税の仕組み上、消費税の納付がない場合は、還付もしないということになっているのです。いずれ転売が実現すれば、その時にはこのマンション販売業者は消費税を納付することになりますが、在庫として売れ残ってしまうこともあるでしょうし、いつになるのかわからないとも言えます。このような場合は、売主に支払った消費税の還付は受けられるのでしょうか?受けられないのでしょうか?

3 これまでは全額の還付が受けられてきた

これまではあくまでも目的は転売ということで、売主に支払った消費税の全額について還付を受けられてきました。またそれを裏付ける消費税基本通達11-2-12という有力な根拠条文も存在していましたし、消費税法の創設当時の国税当局による解説にもそのように書かれていたのです。

しかしここへ来て、国税当局が豹変しました。つまり消費税が納付されない収入(家賃収入)と納付される収入(転売による譲渡対価)が混在しているのだから、売主に支払った消費税も全部ではなく一部しか還付しないという趣旨のことを言い出したのです。これによって発生する消費税の差額は、会社によっては数億円にも上ることになり、一部のマンション販売業者の経営すら揺るがす事態になっているのです。納得がいかない一部のマンション販売業者は国税当局を訴え、中にはこのままでは廃業するしかないと考えているマンション販売業者まで出てきています。東証一部上場企業の株式会社ムゲンエステートは、過少申告加算税を含めて約6億39百万円の追加納付を求められたようです。

4 それぞれ自分達に有利な判例や裁決事例を引き合いに正当性を主張

マンション販売業者側は全額還付が認められた「平成25年6月26日さいたま地裁判決」を取り上げる一方、国税当局側は還付は一部のみによるべきとした「平24年1月19日大阪国税不服審判所裁決」を示すなどして、互いに正当性を主張しています。このように税法というのは様々な解釈があるため、現実には複数の正解があるというのが実態です。つまり裁判の結果が、裁判官や弁護士によって全く違うように、国税当局の担当官や税理士によって税額は全く異なることもあるということを知っておいて損はないでしょう。

最終的に裁判で国税当局が勝てばそのままそれが実務になるでしょうし、負けた場合は税制改正をするでしょうから、どの道、本件については国税当局側の考えに沿った実務に変わっていくと考えられます。

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