資産オーナーの課題を、独立・公正・中立の立場から解決する

Part3 不動産オーナー「冬の時代」不動産投資のトラブル

借地権が設定されている土地によって不動産オーナーが没落する

金井
それから、日本の不動産を語るのに外せない要素として借地借家法があると思うんですよ。借りる側を保護する法律なんだけれども、僕の知る限り日本にしかない法律です。アメリカ人とかにはないじゃないですか。
川上
借地借家法の始まりって、戦争にあるんだよね。家族の旦那さんが戦争に行ってしまって、不幸にも帰ってこない家がたくさんあったんだけれど、その家族の奥さん子供を追い出す貸主が出てこないようにするために、政府の政策でつくられたと聞いています。
金井
その頃家賃更新のときにふっかけたりする悪い貸主がいたことがあったんでしたよね。
川上
だから、旦那さんが安心して戦争にいけるようにつくったのが借地借家法だと。
金井
ただその法律が戦後もそのまま残ってしまい、時代も生活様式も大きく変わった中で、この法律のせいで家賃を上げられないじゃないですか。つまり賃借人が入れ替わったときでしか家賃を上げられない。
川上
借地借家法の厳しいところは、仮に無理やり家賃を上げるために裁判を起こそうとしても、裁判の費用を勘定に入れると割に合わないところなんですよ。
金井
郊外の地主さんって小作人も末裔で、昔自分の先祖が耕していた田んぼの上に家を建てている人が多いと思うんですが、大昔の地代のままなんてことが結構あるのに相続税は今のルールで課税されるんですね。こうなると相続税で郊外型の地主さんが苦しんでしまうわけですよ。
川上
郊外でなくても大いにありえますよ。底地を持つ方結構いらっしゃいますから。
金井
一方で、先祖代々の土地だから大事にしたいっていう気持ちはわかるんですよ。そんな土地を『売る』ってことが、身を切られるような印象を受けるようで。だけど放置しておいても相続税の苦しみからは解放されないし、優良な不動産から売却してしまうことになって、結果没落していく典型例だと思います。今みたいな借地権をうたれている土地を持つ不動産オーナーの課題解決もやられているとのことですが、どんな解決策を取られるのですか?
川上
二つ考えられるんだけど、まず相続税評価の半値くらいで底地を買い取ってくれるところがあります。借地権者に引き取ってもらうんですね。それで駄目だった場合は、単体で買い取ってくれる不動産会社を探すわけですが、表面利回り10%くらい出ないと買い取ってくれないでしょうね。不動産取得税と登録免許税が高いから、そのくらい利益が見込めないとマイナスの資産になるからとても手を出せない。
金井
そこから固定資産税がかかって、しかも減価償却ができないから・・・。
川上
買った側からすれば、実質7%くらいの利回りになるかな。
金井
ただ、考えようによってはいいと思うところは、修繕費や管理費がかからないですよね。
川上
ときどき更新料が入ってくるし。可能なら地代の未払いも請求することできますからね。
金井
そこらへんは交渉の腕次第によるところでしょうかね。貸宅地が売れないというのが値段の問題であって、値段が『高すぎる』のが原因だというのもよくわかります。値段を下げればそれなりの需要が見込めるということですから。

『家督相続』文化の日本と法定相続のルーツ

金井
川上さんは、今の相続税の制度の源流が、戦後の米国の占領政策にあるという考えをお持ちだそうですが、これについて具体的に伺えますか?
川上
戦前までは、家族の中で一番優秀な子に相続させる嫡子相続が普通だったんですね。なんでこんな形式だったのかというと、当時の『家』についての考え方が、現代で言う『法人』に近いものだったからなんですね。だから遺産を分割してしまうと、例えば田舎で田んぼを耕している『家』なら、生産するための財産を切り分けることになる。これじゃ農家としてやっていけなくなるじゃないですか。
金井
「たわけもの」って言葉がありますが、その語源って「田を分ける」ということですよね。
川上
そう、自分の家の田んぼを分けるやつは愚か者だという意味で「たわけもの」。農家として生産するための財産だから、分けられるはずがないじゃないかっていうこと。
川上
ちなみにもう一つ理由があるんだけど、『家』から独立して『分家』となるところには、本家から独立資金を出すんですね。そうした『分家』は、東京みたいな都市部に進出するんですが、仮に『分家』が失敗した場合のセーフティネットになるのが『本家』なわけなんです。だから『分家』が独立する際に、親は独立する子に相続放棄をさせて、『本家』が問題なく相続できるようにしていたと。
金井
そう考えると、戦前と今って随分文化が変わってしまった感じですよね。米国が入ってきてから法定相続分っていう考え方が輸入されたわけなんですが、これも文化の違いが関係していると思うんですよ。米国の場合、一つ一つの取り決めに契約とルールを定める『契約社会』なのに対して、日本はさっき仰ったように『家族社会』じゃないですか。
金井
アメリカ式の場合、「家族間の助け合い」みたいな善意って、「必ず保障されるものじゃないから非常に不安定なものだ。だから契約の中にはそうした不安定な要素になる性善説は排除してしまおう」というアメリカらしい考え方に基づいていると思うんですね。
川上
その理屈でいくと、民法で『扶養義務』ってあるじゃないですか。これって『家族社会』ならではの日本式な考え方だけど、これが相続に関わるとどうなるか。扶養の義務は果たさないのに、法定相続分は保障されているっていうのとか色々おかしいじゃない(笑)
金井
そこもあいまいですよね。だから裁判で「親の介護をしたから遺産の取り分を増やせ」って言っても通じないですよね。そういう意味では、『家族社会』ならではな部分に『契約社会』ゆえのドライな考え方が入り混じっているとも言えますかね。
川上
仮に裁判で訴えても、「介護の日当を1万円で計算して、100万円増やします」くらいしか認めてくれないですよ。
金井
日本では戦前からの『嫡子相続』の歴史が長くて、徳川家光の将軍相続なんて有名ですが、歴史上の人物も『嫡子相続』でときには争いを伴いつつも乗り越えてきました。
川上
確か徳川家って、3代目家光から『長子相続』になったよね。『嫡子相続』だと「誰が『嫡子』になるかで揉めるから」ということで、『長子相続』にして誰を『嫡子』にするかで争わないように」ということを最初に考えたのって、徳川家康でしたよね。

不動産オーナー「冬の時代」不動産投資のトラブル

金井
多くの不動産オーナーが、これから冬の時代を迎えると思います。一方でサラリーマン投資家みたいな人が進出してきて、シェアハウスを活用した不動産投資で問題が発生して大きく揉めています。特定の銀行と不動産会社がバッシングされてますが、一部の会社に矮小化できる話じゃないと考えています。
川上
「不動産の好景気がいつまで続くか」が読めない不動産オーナーは、みんな生き残れないだろうね。シェアハウスだって、需要が伸びてもいつ縮むかがわからないと損してしまう。それに、極端な表現かもしれないけど、山手線の内側しか不動産の価値は無くなるかなって。
金井
よく見る空室だらけな郊外の木造アパートも今回揉めているシェアハウスの件と、仕組みが全く同じなんですよね。ただ間に入っている不動産会社の体力差が違うので、シェアハウスの方が一歩先に表面化してきたんですよ。シェアハウスの場合サラリーマン大家みたいな小金持ちや不動産に慣れてない人、世の中を知らない人が不動産に進出してきて、こういった事件に巻き込まれる。一方で、郊外の木造アパートの場合、巻き込まれるのは高齢者で、情報を仕入れていない人が相続税対策と称して建てさせられるわけなんですね。両社とも事業の方向は一緒なので、このままだと遠からず潰れてしまうのではないかなって。
川上
会社の寿命っていうのもあるけど、業態を変えないと潰れるだろうね。私が不動産屋を始めた頃は、町の八百屋さんや魚屋さんに「土地買ってアパートを建てましょう」と勧めてくる不動産会社がいっぱいいた。曰く「定年後にアパートを取り壊して土地を売却すれば、退職金代わりになる」という具合。当時は経済成長期だったからそれができた。
金井
当時の日本って、ほっといても成長する時期でしたからね。
川上
今はそんなことありえないけれども、不動産も伸びる時期と縮む時期があって、この構図を理解できてないとね。私見だけど、不動産は2割下がっていたらいつでも売れる不動産じゃないと資産にはならないよ。不動産にも流動性を確保しておかないと問題になりますよね。
金井
シェアハウス・木造アパートのどちらも、資金ショートしてしまったら、借金の残額分で売れないですよね。前回のバブルのときって、「売れば自己破産になるし、返済することもできない」不動産が塩漬けになったままズルズルと引きずって崩壊したわけですが、今回も同じ流れになるんですかね。
川上
その可能性が高いと思いますよ。
金井
木造アパートなんか、35年家賃保障っていう、川上さんが不動産業界に入られてから現在までの間っていうのとくっついているわけですけれど。
川上
35年の間で市況なんて、それこそ私が不動産屋やってきている間に何度も変わってるじゃない(笑)
金井
IoTとかも出てきていますから、ますます古い不動産になんか見向きする人は少なくなると思いますね。
川上
建てさせる側の人間なんて、30年後には転勤なり会社辞めてるだろうからって、30年後の市況のことなんて気にしないんですよ。
金井
不動産で問題が起きたときには、薦めた人って誰もいなくなっているんですよね。金融機関が怒鳴り込んでも、契約書にはしっかり書いてあったりして、結局自己責任に終始してしまうということですね。

日本の不動産は今後どうなっていくのか

川上
郊外のマンションって昔畑だったところだけれども、これから人口が減れば、山と畑に戻るんじゃないかなって思うんですよね。
金井
それって環境保護的には良くなるかもしれないですね(笑)でも山じゃ誰も地代家賃払わないでしょう?
川上
国自体が緑豊かになるかな(笑)
金井
ただ「日本より人口が少ない国なんていくつあるの?」っていう話もできて、シンガポールが500万人の人口、Skypeをつくったエストニアで150万人という規模の中で、もちろん物価の差もありますが、食えている国というのはありますから、人口の頭数自体には、経済的にはそんなに問題ないとは思うんです。高齢者と生産人口のバランスの部分が致命的すぎるのは問題なので、移民とかで生産人口を確保しないといけないのは事実ですが。
川上
このあいだ笑い話であったんだけれども、日本が人口過剰になっていた明治・大正・昭和の時期に、アメリカやブラジルに移民した日本人がいたじゃないですか。あの頃は日本人が移民として出て行ったけれど、逆になんで移民受け入れがないのかってことがあったんですよ。
金井
移民と労働人口も、最近結構ニュースになってますよね。そういえばヨーロッパとかで、移民を快く思わない勢力の人が最近取りざたされていますが、その人たちいわく「日本は移民の少ないから日本治安がいい」とか言われちゃってるんですよ。そう言っている人たちって、当地では評判のよろしくないいわゆる極右勢力の人たちですし、こっちからすれば移民が少ないがために色々問題があるので、なんとも言い難いところですが(笑)

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