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 今回のKPCレポートは、海外不動産投資に多くみられる「ジョイント・テナンシー(合有不動産権)」についての贈与税を巡る平成29年10月19日名古屋地裁判決について紹介していきます。

1 経緯

 A氏は、平成19年3月、日系の銀行を介して紹介を受けた不動産業者(日本人)を通じて、アメリカ合衆国カリフォルニア州所在の不動産(以下「本件不動産」という)を購入しました。A氏は、本件不動産の購入代金の全額を自身で拠出することから、自身の単独名義での購入を念頭に置いていましたが、一般的には妻の名義も入れるという趣旨の説明を受けたため、その形式によることとし、A氏とA氏の妻を「ジョイント・テナンツ(共同所有者)」として登記しました。これに対し税務当局はA氏の妻は本件不動産の購入資金を支払うことなくその権利の2分の1に相当する利益を受けたとして、A氏の妻に対して相続税法9条、国税通則法65条に基づき贈与税に係る更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしました。

2 税務当局の主張

 税務当局は、A氏とA氏の妻は「ジョイント・テナンシー(合有不動産権)」の要件を満たす方法により本件不動産を購入し、本件不動産の「ジョイント・テナンツ(共同所有者)」として登記されたものであって、それぞれ2分の1の持分を有しているところ、本件不動産の取得に際し、その購入代金の全額をA氏が負担していることからすれば、A氏の妻は、対価を支払うことなく本件不動産の2分の1相当の経済的利益を得たというべきであるから、贈与税の課税の基礎となる「みなし贈与」があったと認められると主張しました。

3 A氏の妻の主張

 これに対してA氏の妻は「『ジョイント・テナンシー(合有不動産権)』の形式にすることはカリフォルニア州家族法760条等の、アメリカ合衆国の法令上やむを得ない理由に基づくものである」などと主張しました。しかし名古屋地裁は「夫婦共有財産に関する同条の規定は、名義のいかんを問わず、婚姻中に得られた財産は共有財産として扱われるという趣旨を述べるものにとどまると解されるから、この規定があるために、既婚者が不動産を取得する際には、対外的に表示される持分を夫婦で等しくしなければならない、すなわち『ジョイント・テナンシー(合有不動産権)』の形式で所有権を取得しなければならないという帰結が生ずるものとは解されない。また、カリフォルニア州家族法1500条は、夫婦間で制定法と異なる合意をする余地を認めているのであるから、同法760条はいわゆる任意規定というべきであり、この規定によって、特定の共同所有形態が強制されていると解することはできない。以上によれば、原告の主張は採用することができない。」としました。

 また本件は「ジョイント・テナンシー(合有不動産権)」の意味を正確に理解していなかったことに伴う過誤ないし錯誤があったとの主張についても「本件不動産に係る権利の名義が原告(=A氏の妻)と夫(=A氏)の共同名義になること」や「それにもかかわらず、原告(=A氏の妻)自身は何ら取得代金の負担を負わないことについては、何ら錯誤なく認識していたものと認められる。」などとして、課税の基礎となる事実関係についての錯誤に結び付くものではないと判断し税務当局の主張を全面的に認めました。

4 独立の立場にある専門家に相談する必要性

 本件の「ジョイント・テナンシー(合有不動産権)」のように外国の法律上は認められているが、日本の法律上は存在しないものが関係していた場合であったとしても、A氏やA氏の妻の課税関係は最終的には日本の税法に当てはめて解釈をすることになります。このような場合は、非常に高度かつ専門的な判断が必要になりますから、A氏は本件不動産を購入をする前に、独立の立場にある専門家にきちんと相談して「ジョイント・テナンシー(合有不動産権)」や「みなし贈与」について十分に理解した上で、投資意思決定をする必要があったと言えるでしょう。

 本件についてA氏に投資勧誘をしたと思われる「日系の銀行」や「不動産業者(日本人)」はそもそも税務の専門家ではありませんし、そもそも税理士(又は税理士法人)ではない以上「税務相談」をすることは税理士法違反になります(税理士法2条1項3号、2項、52条)。投資勧誘の過程で「日系の銀行」や「不動産業者(日本人)」に「善管注意義務違反」や「税理士法違反」と思しき行為があった場合は、独立した立場にある弁護士などの専門家に相談し、損害賠償請求訴訟の提起も検討する必要があるでしょう。

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