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最近、新聞広告で「タワーマンション節税」という言葉を良く見かけるようになりました。これは「(東京都心にあるような)タワーマンション(=高層マンション)の1室を購入すると、相続税が大幅に節税できる」という点を強調した不動産会社の広告宣伝です。しかしこの「タワーマンション節税」ですが、平成23年に国税不服審判所で否認されている事例があることはあまり知られていません。

1 不動産投資と相続税の節税
「相続税の節税」を強調して、資産家に不動産投資を促す提案型営業は、伝統的に存在しています。不動産は現預金に比べて3~4割、あるいはそれ以上の評価減がとれることも少なくありません。つまり1億円で買った不動産の「相続税評価」が6,000万~7,000万円ということは特に珍しいことでも無く、評価減がとれれば当然にそれに見合う分だけ相続税が減ることになります。
と言っても、現実は3~4割の評価減がとれればまずまずと言ったところでしょう。逆に50%以上の評価減がとれる不動産が存在したとしたら、それは不動産会社を疑った方が良いかもしれません。なぜならば「相続税評価」が6,000万円の不動産を、1億で買えば40%の評価減ですが、2億で買えば70%の評価減となります。つまり不動産を高値で買えば買うほど「相続税の節税効果」とやらは高くなるのです。つまり「相続税の節税効果の高い不動産」をセールスポイントとした不動産営業は、単に不動産を相場の2倍以上で買わせようとしているだけのことも少なくないのです。
これに対して「タワーマンション」は、ごく自然に80%以上の評価減がとれることも珍しくありません。その仕組みの解説は省きますが、「タワーマンション」だけがこのように大きく評価減をとれてしまうのは、財産評価基本通達の不備と言っても良いかもしれません。この点を逆手にとったのが「タワーマンション節税」と呼ばれる新型の提案型営業なのです。

2 平成23年7月1日裁決
これに対して国税不服審判所は既に平成23年7月1日に「行き過ぎたタワーマンション節税」を否認する裁決を出しています。この事案はタワーマンションの「時価(=実際の売買価額)」が約3億円、「相続税評価」が約5,800万円と言うことで、80%を超える評価減となっていました。審判所はその裁決の中で「(財産評価基本通達によって)定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価」することが原則としながらも「形式的平等を貫くことにより、かえって納税者間の実質的な租税負担の公平を害することとなる場合には・・・評価基本通達によらず、他の合理的な方式によってこれを評価することが相続税法第22条の法意に照らして当然に許される」としており、通達を杓子定規に適用することがかえって不合理な結果になる場合は、通達以外の方法によることが当然に許される(むしろそうすべきである)としているのです。そしてこの事案については「評価基本通達に基づき本件マンションを評価することは・・・実際の価値とは大きく乖離して過少に財産を評価することとなり、納税者間の実質的な租税負担の平等を害することとなるから、上記の事情は、評価基本通達によらないことが正当として是認されるような特別の事情に該当するというべき」として、通達による計算結果である約5,800万円ではなく、「時価(=実際の売買価額)」である約3億円を基に相続税を計算するべきであると裁決しています。もちろんこの事案については、他に様々な個別事情がありますから、この裁決を一般化することはできません。しかし裁決の中では「時価」と「相続税評価」の極端な乖離そのものが否認の決め手とされているという点は注目に値します。

資産家は事前に十分な情報を収集し、リスクやデメリットについても理解した上で意思決定する必要があります。

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