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今回のKPCレポートは、退職した従業員を被保険者とする生命保険契約の保険料の損金算入が認められるかどうかが争われた、平成29年12月12日裁決を紹介していきます。

1 平成21年から平成26年にかけて、生命保険契約を締結

請求人は、平成20年3月14日に設立された労働者派遣業及び飲食店業等を目的とする法人です。請求人は平成21年から平成24年にかけて、請求人を保険契約者及び保険金受取人、請求人の従業員(退職者を含む。)を被保険者とする「終身がん保険契約」(以下「本件各がん保険契約」といいます)を締結しました。また、請求人は、平成26年2月28日に、請求人を保険契約者及び保険金受取人、請求人の従業員(退職者を含む。)を被保険者とする「生活障害保障型定期保険契約(以下「本件生活保障型保険契約」といい、「本件各がん保険契約」と併せて「本件各保険契約」といいます。)を本件生命保険会社との間で締結しました。

2 生命保険契約の保険料の全額を損金算入

請求人は「本件各がん保険契約」が、平成24年4月27日付課法2-5・課審5-6「法人が支払う『がん保険』(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」の取扱いの適用がない平成24年4月27日前に契約されたものであり、同日をもって廃止される前の平成13年8月10日付課審4-100「法人契約の『がん保険(終身保障タイプ)・医療保険(終身保障タイプ)』の保険料の取扱いについて(法令解釈通達)」におけるがん保険(終身保障タイプ)に係る保険料の取扱いが適用されるものとして「本件各がん保険契約」に係る支払保険料の全額を支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しました。また、請求人は「本件生活保障型保険契約」は、法人税基本通達9-3-5《定期保険に係る保険料》に定める定期保険に該当するとして「本件生活保障型保険契約」に係る支払保険料の全額についても支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しました。

3 退職した従業員を被保険者とする生命保険契約の保険料を巡って争いに

ここで問題となったのは、請求人が本件各事業年度において損金の額に算入した本件各保険契約に係る支払保険料には、退職した従業員を被保険者とする保険契約に係る支払保険料(以下「本件退職者支払保険料」という。)が含まれていたことです。原処分庁は、退職した従業員を被保険者とするがん保険契約等に係る支払保険料については、請求人の業務との関連性が認められないことから損金の額に算入できないとし法人税等の更正処分等をしました。これに対し請求人は、がん保険契約等は社内規程に基づく従業員に対する福利厚生の一環であることから当該支払保険料は損金の額に算入されるべきであると主張したため争いになりました。

4 国税不服審判所の判断

これに対して国税不服審判所は、以下のように判断しました。
まず「本件各がん保険契約」は、請求人と生命保険会社との間で、請求人の従業員の福利厚生を目的として治療費補助等制度に基づく見舞金等又は弔慰金の原資とするために締結したものであるとした上で、請求人は従業員が請求人を退職した後も5年間は、退職者ががんに罹患又はがんにより死亡した場合に、受取保険金を原資として退職者に見舞金等又は弔慰金を支払うことを約したものであることを確認しました。そして「本件生活保障型保険契約」も、請求人と生命保険会社との間で、請求人の従業員等の福利厚生を目的として就業規則、賃金規程や生活保障型保険規程に基づき所定の金額を支払う原資とするために締結したものであり、請求人は従業員等との間で、生活保障型保険規程等により、就業後の全従業員等が、負傷又は疾病により死亡あるいは所定の障害状態となり、就業が困難な場合若しくは退職のやむなきに至った場合に、受取保険金を原資として退職者に所定の金額を支払うことを約したものであるとしました。以上のことからすると「各がん保険契約」及び「生活保障型保険契約」に係る退職者支払保険料は、請求人の業務との関連性を有し、業務の遂行上必要と認められることから、本件各事業年度の損金の額に算入することができるとし、請求人の主張を認めました。

本件は「従業員が請求人を退職した後も5年間は、退職者ががんに罹患又はがんにより死亡した場合に、受取保険金を原資として退職者に見舞金等又は弔慰金を支払うことを約した」等の事情があったことが、請求人の主張が認められる大きなポイントであったと思われます。退職した従業員を被保険者とする保険料が損金算入できるかどうかは、個々の法人ごとに個別判断が必要となるでしょう。

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