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 今回のKPCレポートでは、税務調査に協力せず帳簿等を提示しなかったところ、消費税等の仕入税額控除が全額否認された平成29年5月22日裁決事例を紹介していきます。

1 消費税等の仕組み

 まず最初に消費税等の大まかなイメージをおさらいしていきましょう。ある商品を仕入先より100円で買ってきて、150円で得意先に転売するビジネスをしている卸売業の会社があったとします。この会社が仕入先に実際に支払うお金は、商品価額100円に消費税等8円を上乗せした108円です。一方で得意先からは商品価額150円に消費税等12円を上乗せした162円を受け取ることになります。そして消費税等の申告期限を迎えると、この得意先より受け取った12円の消費税等と、仕入先に支払った8円の消費税等との差額「12円-8円=4円」を税務署に納付することになります。この得意先より預かった消費税等12円から、仕入先に支払った8円の消費税等を差し引くことを、消費税法の専門用語で「仕入税額控除」といいます。

2 事例の概要

 家電製品卸売業を営む請求人の各課税期間における課税売上高は1,000万円を超えており消費税等の納税義務がありました。しかし請求人は消費税等に関する各種届出書を提出せず、確定申告書を提出していませんでした。
 原処分庁所属の調査担当職員2名は、平成27年5月15日、請求人の自宅に臨場し、調査を開始しましたが帳簿及び請求書等(以下「帳簿等」といいます。)の保存を確認することができなかったことから、請求人に対して、帳簿等を後日提示するよう求めました。さらに平成27年9月24日、調査担当職員2名は請求人と面接し、帳簿等が提示されなかったことから、請求人に対して、帳簿等の提示がなければ「仕入税額控除」が認められない旨を説明しました。

3 帳簿不提示だと「仕入税額控除」が認められない

 消費税法第30条第7項は「仕入税額控除」に係る帳簿等を保存しない場合には「仕入税額控除」ができない旨を規定し、同項ただし書は、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定しています。調査担当職員はこの点について、該当条文を読み上げるなどして約1年間に渡り継続的に説明しました。しかし請求人は、仕事が忙しいことなどを理由に、帳簿等の提示を拒否しました。原処分庁は調査において請求人から帳簿等が提示されないことを理由に「仕入税額控除」をしないで税額を算定し、消費税等の各決定処分等をしました。
 そうすると1の数値例で言えば、本来は4円納めれば良い消費税等が、12円納めなくてはならないということになります。家電製品卸売業の粗利益率はさほど高くないことを考えると、請求人にとっては本来払うべき消費税等の数倍も納付を求められたものと思われます。

4 再調査で慌てて帳簿等を提示

 請求人はこれに驚いたのか、再調査の請求をし、その調査においては帳簿等を提示しました。そして帳簿等を提示したのであるから「仕入税額控除」が認められるべきであるなどとして、原処分の一部の取消しを求めました。

5 国税不服審判所の判断

 国税不服審判所は、本件調査担当職員らは「請求人に対して、平成27年5月15日から平成28年5月30日までの約1年間にわたり、継続的に、帳簿等の提示がない場合には仕入税額控除の適用が認められない旨説明するとともに、帳簿等の提示を求めたが、請求人は、本件調査担当職員らの求めに違法な点はなく、これに応じ難いとする合理的理由も格別なかったにもかかわらず、原処分に至るまでそれらの提示を拒み続けたことが認められる。」とした上で「請求人が、所定の期間及び場所において、税務職員による検査に当たって適時に帳簿等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を保存しない場合に当たるというべきであり、帳簿等の保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があることをうかがわせる事実も見当たらないことからすれば、同項ただし書に該当する事情は認められないから、消費税法第30条第1項の規定は適用されず、仕入税額控除の適用は認められない。」としました。また請求人の「再調査の譜求に係る調査において本件領収書等を提示したのであるから、それらに基づき算出された消費税額については、仕入税額控除の適用が認められるべきである」という主張については「請求人は、本件調査担当職員らから原処分調査において適法に帳簿等の提示を求められ、これに応じ難いとする合理的理由も格別なかったにもかかわらず、それらの提示を拒み続けたことが認められる。そうすると、請求人が、原処分調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても、税務職員による検査に当たって適時に帳簿等を提示することが可能なように態勢を整えて保存していたということはできず、消費税法第30条第7項に規定する帳簿等を保存しない場合に当たり、請求人に同項ただし書に該当する事情も認められないから、消費税法第30条第1項の規定は適用されず、仕入税額控除の適用は認められない。」とし原処分庁の主張を全面的に認めました。

6 まとめ

 ちょっと「意地悪」なやり方のような気もしますが、調査担当職員は約1年間に渡り説明をしていますし、何より消費税法上は全く問題のない決定処分と言って良いと思います。このように税務調査に非協力的な者に対する合法的な「意地悪」の方法は、他にも複数存在しています。まずは求められた資料をきちんと提示し、聞かれた質問に対しても正面から答えた上で、法的に正しいと確信することは堂々と主張するという姿勢が重要です。

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